東浦町議会議員 こまつばら英治の時論公論

こまつばら英治の時論公論

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県教育委員会職員経験のある地方議員から見る学校弁護士配置について

学校現場でのいじめや虐待に対応するため、文部科学省が「スクールロイヤー」と呼ばれる専門の弁護士を全国に約300人配置する方針を固めたことが分かった。各地の教育事務所などに拠点を置き、市町村教育委員会からの相談を受ける。来年度からのスタートを目指して準備を進める。経費は年間約4億円を見込み、財源に地方交付税を活用する考え。

(中日新聞2019年9月24日付 1面抜粋)

 

元県職員で教育委員会に携わり、教育事務所及び県庁を経験している私としての意見を述べさせていただきます。

まず、新聞報道の内容は、文部科学省が正式に発表したものではないので、事実を含めて詳細なことは分からないことを前提にいたします。

 

はじめに、弁護士数の推移ですが、新司法試験が導入されて初めての試験が2006年に実施されました。その2006年の弁護士数は22,021人です。2018年の弁護士数は40,066人です。新司法試験制度が導入されてから、この12年間で18,045人増加しています。逆に新司法試験制度が導入された2006年から12年前の1994年の弁護士数は、14,809人となっています。2006年と比較して7,212人の差となります。新司法試験制度を導入してから、導入以前の増減数に較べ、弁護士数が急増していることになります。その急増は、約2倍増近くにもなっています。

私も、弁護士の知り合いが数人いますが、司法試験に合格しても、弁護士事務所に就職できる者が少ないのが現状であり、年収も300万円代が多いとの話を耳にすることがあります。現状、需要と供給のバランスを欠いているとういことです。このことから、実務経験がない弁護士が多く存在している実態が浮かび上がります。これは、ある意味、新司法試験制度の失敗かもしれません。今回の施策が、飽和状態にある弁護士業界のひとつの打開策にしてしまうことは許されることではありません。

 

そのような状況にある弁護士を教育現場に配置するという施策です。面接方法、採用基準はどうするのか、さらに人材が適切であるかを見極めなければなりません。これは、極めて難しい作業となります。

 

経費は約300人配置し、年間約4億円ということから、1人あたり年額約130万円となります。月額約11万円という額が算出されますが、この金額から毎日勤務する常勤ではなく、週に1、2日しか勤務しない非常勤での勤務ということが想像できます。それも、学校現場ではなく、子どもがいない教育事務所であります。

 

想定される弁護士の責務は、法的側面からのいじめの予防、学校における法的相談への対応、法律に基づく対応の実施状況の検証となるでしょう。当然、弁護士には法律の専門知識が期待されますが、それ以前に教育現場の問題を解決するためには、教育学的知見の尊重や教師との連携体制の整備が必要と考えます。弁護士はおおむね失敗経験が少なく、成功体験が多く深刻な挫折を経験していない者が多いと思います。そのような弁護士が、ストレスに苦しむ子どもや、学校に不満を持つ保護者の心情をどれほど理解できるのでしょうか。

 

また、弁護士の発言は教育委員会の中では、かなり尊重されることになるでしょう。弁護士が、法律的判断を下したり、体罰、パワハラ、モラハラに該当しないと言えば、その判断に教育委員会は従がってしまう可能性は高いです。一方、教員の職場環境の改善は進むでしょう。

しかし、子どもたちにとって言えば、その弁護士は教育事務所にいるので、当該学校現場で起きた事実を弁護士は弁護士以外の者から聴くことになり、事実を正しく認識できるのか疑問が残ります。事実であるか不明な状態で、当該弁護士は意見を述べ、教育委員会はその意見、指示に従うのです。教育現場の実践と苦労を理解していない弁護士が、法律の専門家として学校現場の救世主扱いをされ、上から目線で指導と助言をする事態が想像されます。

 

今回の弁護士の学校配置については、当該弁護士が学校側なのか、生徒側なのか、どちらの立場にたって適切な対応をするのかによって、方向性や妥当性は変わってしまします。しかし、市町村教育委員会から雇われていると考えると、学校側に立ってしまうことが通常の感覚ではないだろうか。そもそも弁護士は、クライアントの立場にたって物事を判断する職業であり、これはある種の職業的習性であります。しかし、あくまでも中立公平な第三者でいなければなりません。特に、生徒、保護者、学校が対立関係にある場合は、裁判に至ることも想定し、中立公平な立場でいなければなりません。弁護士が学校側を援助する発言をしてしまえば、事実の解明も遠ざかり、生徒、保護者に対しても否定的な影響を与えることも危惧されます。

 

例えば、民事裁判(損害賠償請求事件)では、被害者側が学校や教師による違法行為を証明しなければなりません。そうしなければ、学校、教育委員会側は法的責任を負うことはありません。また、学校側が事実を証明する義務はないのです。

 

一度スタートしてしまえば、方向性や位置づけを変えることは難しいです。スタートする前に、先進的に実施している自治体に学び、スクールロイヤーによって、教育的配慮のない法律判断が下される危険性を回避するシステムを構築してから、事業を進めていっていただきたいと強く思います。

 

| 教育 | 20:38 | comments(0) | - |









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